1995年2月20日(月)自主出勤第135日(再開第33日)・自宅療養
 午前中ホームヘルパーさん。
 このところ、下半身のむくみが激しい。田中耕平ドクターに電話すると、「すぐ来い」というので、ヘルパーさん「付き添い」で、11:00ごろ関東病院へ。診察の結果「タンパク質が不足している。最低3日の入院が必要」とのことだが、家で「安静にすること」「良質のタンパク質をとること」を条件に「自宅療養」を許可してくれる。
 よって、自主出勤は当分の間(徳見の体力が戻るまで)中断となる。
 病院の帰りに、指示された「良質のタンパク質」を求めて、数軒の店をまわるが、なかなか見つからない。なにしろコーヘイさんの指示は「動いている動物の肉」というのだから……(そのココロは――たとえば、鳥肉ならば「ケージ飼いのブロイラーではなくて、放し飼いのニワトリ(のササミ)」、牛なら「ホルモン剤などを使用していない脂のない部分やレバー」という注文なのだ)。
 結局、200グラム1400円もする「ウインドファミリー」の牛肉を筆頭に、普段なら買ったこともない品々を(「薬だから……」と思って)買う。とにかく、ハンスト後は「(農薬を使っている)普通の米」はシブイ味がしてノドを通らないため「無農薬・有機米」だし、梅干し一つにしても「自然食センター」の「無添加」の品だ。そんなこんなで、生活保護をもらっている徳見の場合は、かなりの厳しい出費である。しかし、考えてみれば、ハンスト中は1日2リットルのミネラルウォーターだけだったのだから、トータルではどうなのだろうか?

2月21日(火)自主出勤第136日(再開第34日)・自宅療養
 「ハンスト23日貫徹/自主出勤もドクターストップ/自主出勤再開未定」と書いたポスターを、徳見の車イスに貼って、支援者の杉本博幸さん、市大学生の山口美穂さんとスケットの3人で『自主出勤ニュース No.28』をまく。
 自治労の定例朝ビラで、本部・支部役員の方々が、徳見の姿がないので、こもごも心配の言葉をかけてくれる。
 終わって、学校保健課へ。車イスに貼ったポスターを、保健課の廊下の壁に貼って、中に入る。「机」の上や周りは、いつものようにダンボール箱や紙包み……。初めて支援に来た山口さんに、この状態に至った経緯を説明する。山口さんの感想……。

 教育委員会の現場を初めて訪れて、机の上に山積みになった荷物や周りの貼り紙の意味を聞かされ、ショックを受けました。

 「貼り紙」とは、「業務に支障があるので、退室願います」という(ロッカーに貼ったまま何の役にも立っていない)貼り紙と、「禁煙」の大きな貼り紙――こちらは貼った長島さん自身が、エレベータ前でタバコを吸うハメになってしまった、というお粗末な結果となったものである。
 しばらくすると、長島さんがすごい剣幕で部屋を出て行ったので、「さては……!」と思ったスケットが、ビデオを抱えて、すぐにもう一方の出口から出ると、ポスター前で鉢合わせ。
 長島さん、スケットに向かって、怒りに燃えながらポスターを指しつつ、「取りなさいよ!」と命令する。
 知らん顔でビデオを回すスケットに、ますます腹を立てたらしく、カメラを手でさえぎり、「こんなことしかできないの? みっともない、大の男が……。やめなさいよ!」と吐き捨てるように言って、憎々しげにカメラをにらみつけながら引き上げて行く。何が「みっともない」のか、よく分からないが、たかがポスター1枚、黙って取ればいいのに……!
 さて、このポスター、木曜日のビラまきの時まで貼ってあるだろうか? 興味津々で学校保健課を後にする。
 先日受け取った「あまりバカバカしくて、破ってしまった」市長の回答文中の、「横浜市職員への身体障害者雇用について――基本方針」なる文書をもらいに公聴課へ。10分ほど待たされたが、目的の文書を持ってきてくれる。
 徳見は医者に「安静」を指示され、午前中寝ていたのだが、午後、解雇問題についての「相談」に、桜木町の森田明弁護士の事務所へ。席上、三木恵美子弁護士が「なぜハンストなのか、その辺の戦術の意味が分からない」という。徳見が所属する組合(自治労横浜)がなぜ動かないのか、三木さんには理解できないらしい。徳見「組織も何もない一個人が、当局への怒りを表現するためには、こんな形しかとれなかった……」と説明する。「戦略・戦術」以前の素朴な怒りの表現だ。
 その「怒り」が、自らの身体を苛(さいな)むことでしか表現できないのは悲しいことだ。「それでは、焼身自殺になってしまう……」と三木さん。そう、「個人的な怒り」に終わってしまえば、行き着くところは「死をもっての抗議」しかない!

2月22日(水)自主出勤第137日(再開第35日)・自宅療養
 一日中どこへも行かず静養。昨日もらった「横浜市職員への身体障害者雇用について――基本方針」を読む。
 全10項目からなる「基本方針」の第4項目に、「働く意志と能力のある身体障害者に就労の道を開くため、身体障害者を対象とした選考」をするといい、その「受験資格」に「自力通勤・自力勤務」の条件が規定されている。「就労の道を開く」といいつつ、こうしてその道を閉ざす条項である。
 一方で、「適職の拡大を図るため……職務内容等の検討を行い、障害者個々の特性にあった職務・職場の確保に務める」「……職員は(身体障害者の)職場への受け入れに協力するとともに、障害を有する職員の自立への努力に対し、援助・協力に務める」などと、学校保健課の佐藤課長に聞かせたい条項もある。
 しかし、いずれにせよ「務める」だけだ。市の「努力」の程度は、「健常者が障害者になれはクビ」「障害者は障害が重度化すればクビ」という事実によっても明らかだ。

2月23日(木)自主出勤第138日(再開第36日)・自宅療養
 徳見は、今日も一日自宅にて静養。ムクミは腹まで広がり、腹の皮が急激な膨張のためにヒビ割れて、汁が出ているのが、我ながらおかしい。毎週木曜はヤマギシが、トラックで近くまで売りに来るので、ドクター指定の「薬」――「動いている動物の肉」を、久しぶりに買う。
 スケットが午後、学校保健課へ。「先日火曜日、壁にはったポスターは……?」と見に行く。当然ながら(!)ボスターは剥がされている。そこで、長島さんのところへ。「あれからすぐに剥がした。勝手に貼ったのだから、勝手に剥がして何が悪い」とうそぶく。「ポスターは徳見のものだから、返してほしい」と頼むと、「知らないよ。その辺にあるだろ?」と空っとぼける。長嶋さんも役者だ! マ、どうでもいいことなので、適当に引き上げる。
 さて、昨日もらった「基本方針」に記載されている関連の資料をもらうために、人事課へ。
 目的を話すと、一人、また一人と、結局4人の職員がやってきて、そのあげく「係長がいないから分からない」という。秘密でも何でもない文書一つをもらうにも、これが役所の流儀なのだ。何度もこういう場面に出会ってきたので、いまさら驚くこともなく、素直に引き上げる。
 5時、教育委員会ビル前でビラまき。スケット2名と神学労・岩野さんの3人で『自主出勤ニュース No.28』をまく。

2月24日(金)自主出勤第139日(再開第37日)・自宅療養
 徳見、自宅にて静養。
 スケットが病院へ薬を取りに行く。帰りに、昨日に引き続き「基本方針」関連の資料をもらうため人事課へ。どういうわけか、今日は丁重にもてなされ、応対の金井係長も「忙しい」といいつつ、インギンに対応してくれる。

補足 23日間のハンスト後、2週間たった。この1週間で急激に体重が増加(1週間で10キロほど増える)。自宅静養中は、寝たり起きたりだが、起きているときは、自分のための食事作りのほかに、2人のスケットの分まで、何やかや料理を作ったりしているが、ハンスト中ほどではなく、料理作りも、惰性でやっているような感じで、やがて止まってしまうかもしれない!? むくみは全身に広がり、目の痛みが出たり、「アタマがはたらかない!」とぼやいたりして、ハンスト中の「緊張感」がなくなり、体力の消耗と共に、「気力」も消耗しつつあるようだ。

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