「障労裁判」報告/バックナンバー

一審(横浜地裁)判決直前号

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原告(学校保健会歯科衛生士/徳見康子)証言

 解雇された徳見の証言が2回にわたっておこなわれた。
 1度目は、9月12日、原告側の主尋問、そして、2度目は、昨(2002)年10月31日の被告側反対尋問である。証言に先立って、「陳述書」を作成、提出した。

1.原告側主尋問
 主尋問は、02年9月12日、原告代理人・森田明弁護士が、陳述書にそって、これまでの解雇経過などについて質問した(尋問調書公開予定)。

2.被告反対尋問
 反対尋問は、10月31日、被告代理人・金子泰輔弁護士が尋問した。尋問調書はまだできていないので、簡単に説明すると、正直言って、何を質問したかったのか、あまりよく分からない尋問だった。おそらく、「原告は、働ける体の状態ではないから、職場復帰を求めるのは無理」ということを言いたかったのかもしれない。つい1週間ほど前に、被告は、徳見が休職中に「休職更新願い」に添付した手紙などを証拠として提出したのだが、それを引用して、「あなたはこんなに休んでいた」「歯科衛生士としての仕事をするような体の状態ではない」などと主張したかったらしいのだが……。
 いずれにせよ、裁判所から「尋問調書」が送られてきたら、公開する予定である。

3.今後の展開
 今回で、「証人調べ」は終了し、次回からは「進行協議」となった。進行協議は、非公開で、原告・被告双方を裁判所が別々に(あるいは、一緒に)話を聞きながら、今後の裁判のすすめ方を検討するというのだが、今回の証人調べの前にも、1年間にわたって進行協議がおこなわれ、裁判所から、和解の打診がなされ、結局被告側がまったくそれを受け入れなかった結果の証人調べであった。
 これが終わった今の時点での進行協議は、裁判所が、以前より以上に「確信を持って」和解案の提出に向けての協議となるものと思われる。
 この裁判は、障害者となった原告を、学校保健会(実質的には横浜市)が、それを理由に解雇したものであり、横浜市の障害者施策が問われるものであるから、これまで、裁判の場で登場してきた横浜市教育委員会学校保健課の課長・係長クラスの判断のレベルを超えた問題である。市が、どこまで「真剣に」この裁判に取り組むのか、注目していただきたいと思う。

進行協議

第1回(12月16日)
 非公開の「進行協議」第1回は、冒頭、裁判長が「原告の復職を前提にした和解勧告を出します。そのための検討を被被告側はするように……」と述べた。それに対して、被告学校保健会側の代理人は「そのような勧告が出ることは予想していたが、検討はしていないので、これから検討したい」と答え、次回の期日(1月27日)をきめて終わった。

第2回(1月27日)
 被告側は、「職場復帰のために、『より真面目』に検討するので、その内容は公開しないでほしい」という条件を出した。復職を強く望む原告としては、和解成立のために、その条件をのむことにした。しかし、もう一つの条件は「横浜市大病院で、リハビリ科の検査を受けてほしい。その上で、改めて検討する」というものである。しかし、これまでの裁判の争点からいっても、検査する意味は全くない。その検査結果を基に、「徳見の体の状態では復職は無理」という、これまでの被告側の結論を裏打ちするようなものになることは明らかである。このような「無意味」な検査を受け入れるつもりは全くない。「次回の進行協議は2月14日、バレンタインデー(関係ないけど!)。被告側の出した条件について、こちら側からの「返事」となる。

第3回(2月14日)
 被告側の「条件」の一つである「横浜市大病院リハビリ科の検査」について、原告側は、「受ける意味がない」として難色を示したが、裁判長は「被告がああ言っているのだから、受け入れないと先へ進めない」として、「この検査結果を裁判の証拠にはしない」という前提のもとに、「検査をぜひ受け入れてほしい」と「説得」される。やむなく原告・徳見は、「この検査の結果は、復職した場合に、徳見の身体の状態に合わせた仕事のやり方を工夫するための資料として使う」ならば、として、検査を受け入れた。

第4回(3月28日)
 被告側の要求である「横浜市大病院での検査」は、2月24日から3月6日まで、延べ7日間。PT(理学療法)、0T(作業療法)の検査や医師の診察などを受ける。しかし、検査結果の報告が病院側から届かず、今回の裁判では、「報告書」の受け取り方法や次回の日時を決めただけで終わる。

第5回(5月16日)
 5月初めに、市大病院から検査結果の報告が届く。この報告書に基づく被告側の結論は、裁判長の説明によれば「復職の受け入れには消極的で、『金銭的に解決してほしい』というもの」だという。「こういう内容の回答がくるとは、思ってもいなかった」と、裁判長も腹立たしさをにじませる。被告側の姿勢は以前とまったく同様に、原告・徳見の「できない部分」のみを取り上げて、「仕事ができない」というだけである。「できない」部分をどのように補えばできるのか、そのような検討をまったくしようとはしない。「立ったり座ったりできないから」「車椅子ではダメ」という従来の主張をまったく変えようとしない。「……こうなったら、もう判決を出すしかないか?!」という雰囲気の中で、徳見が「被告はまだ『使用者』としての責務を果たしてはない」として、障害者を解雇したり、職場復帰させたりする場合に、使用者がおこなうべきこと――「障害者の雇用促進法」などの規定に基づき、「徳見が仕事をする場合、どのような整備をするべきか」を「職業安定所(ハローワーク)」の障害者担当の専門家に検討してもらいたい、と述べる。
 裁判長は、「もう一度被告にチャンスを与える」として、この提案を被告側に伝える。被告側は、裁判長の強い姿勢にやむなく(?!)この提案を受け入れることを表明して、1時間あまりの「協議」は終了した。

第6回(7月4日)
 学校保健会当局側は、「ハローワークでは、アドバイスはなかった」といい、前回までと変わらず、復職拒否の姿勢は全く変わらない。裁判長の話では、「原告を受け入れるように再考を求めたが、『あまり期待しては困る』という返事だった」そうで、さらに「金銭的な解決なら和解をすすめる」と言ったとのこと。
 原告としては、「これ以上進展がなさそうなので、判決もやむをえない」という意向を表明した。裁判長は被告側に「原告は、こう(判決もやむをえないと)言っているが、最終的に(徳見を)受け入れる気がないのか」と言ったら、「最終的な検討していないので……」という返事だったという。
 あくまでも和解にこだわる裁判所によって、8月7日に、もう一度和解のための期日を入れることになった。

第7回(8月7日)
 当局の回答は「検討したけれど、職場復帰の受け入れはできない。和解するなら、金銭的な解決しか考えていない」という意向が表明された。予想していたとおりの内容であった。それにしても、どのように「真面目に」検討したのか、相変わらず、全く説明もなくも、不誠実としかいえない。
 こちらとしては、すでに前回の段階で、「判決しかない」と(残念ながら!)結論していたので、裁判所が、「被告はこう言っていますが、原告としてはどうしますか」ときかれて、「判決をお願いします」と答える。
 というわけで、10月2日、13:10、公開の法廷で結審となる。

 横浜市は、なぜ、これほどまでに、中途障害者を排除するのだろうか。バリアフリーだの、人権教育だの、さまざまに「口当たりのいい」言葉を並べたてながらも、結局は「立ったり座ったりできない」(健常者と同じようにできない)という理由で、障害者労働者を排除するのである。
 市長が替わっても、市行政の体質は全く変わっていない。それどころか、「能率・効率」を追求する中田市長の姿勢は、それ以前にもまして「障害者」に限らず、「能力のない(とされた)」職員の排除へとなってゆく。
 このところ、横浜市職員の「不祥事」が相次いでいるのは、新聞の「分析」によれば、「このような風潮の中で、やる気を失なった職員が増えている」というのだが……。

第8回(10月2日)
 双方が「最終準備書面」を提出。裁判長は「判決言い渡しは、1月22日、4時30分」と告げて結審となる。神奈川・読売・毎日新聞の記者が取材にきて、傍聴者ともども、1時間近く、これまでの裁判の経過や、問題点などについて話し合う。

神奈川新聞(2003年10月3日 朝刊)
「障害者就労訴訟」が結審
◆横浜地裁、来年1月に判決
 車いすで自力通勤ができないことなどを理由に解雇されたのは不当として、横浜市青葉区の歯科衛生士、徳見康子さん(56)が横浜市学校保健会に雇用関係の確認などを求めた訴えの口頭弁論が二日、横浜地裁(福岡右武裁判長)であった。原告、被告が最終準備書面を提出し、結審した。判決は来年一月に言い渡される。
訴えによると、徳見さんは横浜市内の小・中学校で歯科巡回指導に携わっていたが、左手にまひが発症。リハビリ訓練中の転倒事故がもとで車いすの生活となり、市学校保健会は一九九五年一月に「自力通勤、勤務ができない」との理由で解雇した。
 市学校保健会は横浜市内の学校保健活動を行い、事務局は横浜市教委の学校保健課にある。

◆見えぬ基準、増える解雇件数
 障害者が働く場を確保するための状況は、不況を背景に職場がコスト圧縮を急ぐ動きも加わって厳しさを増している。県内の障害者解雇件数は二〇〇二年度で百四十八件(前年度比51・0%増、公共職業安定所への届け出ベース)と高水準で推移。社会的には障害者雇用の機運が高まる一方、個別の職場で決められた就労ルールに基づく解雇が絶えない。関係者は「現場での支援強化による就労のすそ野拡大を」と訴えている。
 「車いすに座っても子供たちの歯は見える」。学校を巡回して子供たちに歯磨きを指導していた歯科衛生士の徳見康子さんは、中途障害を理由に横浜市学校保健会から解雇された。「心身の故障のため職務遂行に支障がある場合は免職できる」との就業規則に触れると判断されたためだ。
 徳見さんは二〇〇〇年六月に提訴。しかし被告側は「当時の勤務状況から業務に耐えられないと判断した」と主張。和解交渉でも「金銭での解決を」との姿勢を崩さず、隔たりは埋まらなかった。
障害者雇用促進法では民間企業(常用労働者数五十六人以上)に対して1・8%以上の障害者雇用率を義務付けている。それでも県内の雇用率は昨年で1・39%にとどまり、全国平均の1・47%を下回った。
 障害者雇用では現在、福祉的就労から一般就労へ道を開く動きが加速中だ。就業が困難とされる職種に雇用義務数を軽減して算出する「除外率」は、段階的廃止に向けて来年度から見直しが始まる。障害者が独力の業務ができるまで職場で支援するジョブコーチ(職場適応援助者)などの試みも広がってきた。だが現実には、障害を理由にした解雇がなお後を絶たない。
 障害者を解雇する際には職安への届け出が必要となる。県内の届け出数は二〇〇〇年度百十四件、〇一年度は九十八件で、〇二年度は百四十八件にまで増えた。
しかもこの数字には、障害者自らが仕事についていけず退職を選ぶ例はカウントされない。神奈川労働局も「厳しい経営環境で企業が人員削減する状況下でも、障害者の雇用率は水準を割り込まないよう指導を繰り返している」と強調する。
だが実態は、厚生労働省の「モデル就業規則」に沿って各事業所が定めた就業規則に基づき、雇い主に判断がゆだねられる例がほとんど。そもそも国内法体系には労働契約をめぐる明確な規定がなく、個別の労使紛争に対する判例を積み重ねてきたのが実情だ。
 原告側代理人の新美隆弁護士は「民間同士の雇用契約に行政が介入するのは難しい面もあるが、障害者の社会参画促進は時代の流れ。理念だけに終わらせず、明確な規範が必要だ」と話している。

読売新聞(2003年10月3日 朝刊(横浜版))
中途障害理由の解雇無効訴訟が結審 横浜地裁=神奈川
東京朝刊 横浜
◆ 原告「工夫すれば同じ仕事できる」
◆ 被告「自力で通勤、勤務ができない」
 学校で歯磨き指導に携わっていた横浜市の歯科衛生士が、職業病のリハビリ中の事故で自力歩行ができなくなったことなどを理由に解雇(免職)されたのは無効だとして、勤務先の同市学校保健会を相手取り、雇用関係の確認を求めている訴訟が二日、横浜地裁で結審した。「工夫すれば同じ仕事はできる」と訴える原告側に対し、保健会側は「自力で通勤や勤務ができない」という免職時の判断を譲らず、和解も決裂していた。来年一月に予定される判決では、障害者雇用のあり方が問われることになりそうだ。
 訴えていたのは、横浜市青葉区元石川町の徳見康子さん(56)。六七年に市教委の外郭団体の市学校保健会に採用され、市立小学校を巡回して、児童の歯磨きの状態を診るなどの歯科指導をしてきた。
 しかし、職業病で運動感覚のマヒ症状などが発生。さらに、そのリハビリ中の事故で車いす生活を強いられるようになり、九五年一月、勤務規程に基づき、「心身の故障で勤務遂行に支障がある」として免職となった。
 徳見さんは裁判で、〈1〉高さが変えられる車いすを使う〈2〉児童に左右に座ってもらい、交互に診る〈3〉ひざ枕をして診る――などの工夫をすれば、「車いすでも仕事はできる」と訴えてきた。
 しかし、保健会側は「児童が立ち、歯科衛生士が中腰になる現在の検査方法は(徳見さんには)できない」「一人あたり秒単位の短時間で診ることができない」「児童のプライバシー保護上、介助者は認められない」などと反論した。
 徳見さんの代理人の弁護士は、「公的団体でもある保健会に、『障害者が仕事をするためにどういう工夫が可能か』という視点が全くない。子供たちにとっても、障害者と接する良い教育の場になるのに」と保健会の姿勢に首をかしげる。
 保健会側は二日の法廷で、「(原告側は)実際の職務内容や、教育現場における学校保健教育の一環であるという視点に全く欠けている」と主張した。

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次回裁判のお知らせ

 10月2日、結審。双方が「最終準備書面」を提出。裁判長は「判決言い渡しは、1月22日、4時30分」と告げて結審となる(その後、変更となった)。神奈川・読売・毎日新聞の記者が取材にきて、傍聴者ともども、1時間近く、これまでの裁判の経過や、問題点などについて話し合う。
  次回は判決
  判決・2月13日/4時50分/横浜地裁

   5時30分から記者会見および「裁判報告会」。開港記念会館9号室

判決にあたって――横浜市長・中田宏様
 横浜市学校保健会の歯科衛生士・徳見康子が、解雇撤回を求めておこなっていた裁判は、裁判所の再三の和解勧告にも関わらず、保健会が拒否をし、判決が出されることになりました。
 保健会は、「立ったり座ったりできない障害者になったから、歯科衛生士の仕事ができない」として、徳見さんを解雇したのですが、「このような理由で労働者を解雇することが許されるのか」が問われた裁判でした。
 裁判では、被告・保健会による「(徳見さんが)車椅子になったから、歯科衛生士の仕事ができない」という解雇理由は、その根拠がきわめて薄弱であることが明らかになりました。
 また、学校保健会は、実質的には横浜市と一体であるにもかかわらず、この解雇は、障害者雇用における国際的な流れや、国の方針、また、横浜市自身が掲げる「障害者雇用についての基本方針」の精神にも反しています。
 裁判所の再三にわたる「復職を前提とした和解勧告」からしても、裁判において、解雇の不当性は明らかになっています。原告が勝訴して、「解雇無効」の判決が出た場合には、保健会および市は、この判決を厳粛に受けとめ、控訴することなく徳見を職場に受け入れ、障害者施策を再検討するべきだと思います。
 もし、控訴するようなことがあれば、「障害者を排除する横浜市」の汚名を全国に広めることとなり、私たち横浜市民としても恥ずべきことと言わざるをえません。
 市長のご英断をよろしくお願いいたします。