(被告)準備書面2

平成16年9月15日

甲92号証(ビデオテープ)について
1 控訴人は,甲92号証(ビデオテープ)を書証として提出し、これによれば「控訴人が歯口清掃検査等を行うことは可能である」と主張する(平成16年7月26日付け証拠説明書)。
しかしながら,このビデオテープは,平成16年6月から7月にかけて撮影されたものにすぎず,本件免職当時の控訴人の状況を明らかにするものではない。
すなわち,控訴人がリハビリテーションを行った結果,本件免職から10年近くが経過した現時点において,その症状が若干変化したことは十分考えられるところである。
2 また,甲92号証に撮影された控訴人の状況を前提としても,控訴人が被控訴人において本件免職当時に行っていた歯口清掃検査等の職務の遂行に支障があり,又はこれに堪えないものであったことは,以下のとおり明らかである。
3 まず,甲92号証において控訴人は,対象児童に対してかなり時間をかけて歯口清掃検査を行っているが,被控訴人が原審で主張したとおり,実際の歯口清掃検査では,一人の児童に対してかけられる時間は十数秒ないし数十秒程度の秒単位の時間にすぎず,そうした実際の歯口清掃検査を控訴人が行えないことは明らかである。
4 また,甲92号証では対象児童が控訴人と対面して椅子に座って検査を受けているが,実際の歯口清掃検査においては,児童の方を着席させることはほとんどない。けだし,対象児童の身長が著しく個人差があり,そのため対面する歯科衛生士の方で児童の身長に応じて立ったり座ったり中腰になるなどして即座に口腔内が見えるような位置を確保する必要があるが,控訴人にはそうしたことが行えないことが明らかである(乙70〜72号証参照)。
5 さらに甲92号証で控訴人は,車椅子に座った状態で,身体を斜めにしながら歯口清掃検査を行っているが,1名ないし2名程度の児童に対して行うのであれば格別,1クラス以上の多人数の児童に対して,同様の姿勢を維持して歯口清掃検査を行うことは控訴人には不可能である。
6 なお,甲92号証において控訴人は,児童の口を自らの指で直接触れて開いている場面があるが,この点も被控訴人が原審で主張したとおり,本件免職当時は歯科衛生士が指にサックを付けて検査を行い,検査が一人終了する都度指先をアルコール消毒するなど両手指を使用した細かい作業が必要となるところ,控訴人には不可能である。
7 このように,控訴人が証拠提出した甲92号証によっても,控訴人の本件控訴には理由がないことが明らかであるから,本件控訴は速やかに棄却されるべきである。
以上

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