97.10.28
武蔵野赤十字病院での、診療録のコピーを参照にして回答します。 1.徳見を診察した際の所見 徳見氏の診察の初診は、平成3年6月7日です。 この時の所見は、自覚症状として、「頚部痛」「頭痛」「左上肢の疲労感、つっぱり、だるさ」「作業中の上下肢のつっぱり。振戦」を主訴としていました。他覚的所見として、左上下肢の腱反射の著しい亢進、深部反射の陽性を認めた。頚部の伸展圧迫試験で、前屈(屈曲)で異変はないが、後屈(伸展)で頚部痛と吐気を認めた。筋力は左母指球筋の明確な低下を認めた。X線上は、頚椎の前方固定(第3〜6頚椎)後を示していた。 転倒後、3月経過しているが、上記の診察と前医の紹介状(南共済病院の大成医師よりの9月30日付け)にも明らかなように、頚椎症性脊髄症によって、頚髄の易障害性が存在していたのは明らかであり、なんらかの外傷によって頚髄に障害がくわわって、それが、この時点まで遷延したものと考えた。さらに前方固定によって頚部の可動性が減少しているため、手術で固定した頚椎板の上下椎間板に、より過剰な負担がかかるのは当然であることから、いわゆる「鞭打ち損傷」様のさまざまな不定愁訴(上記の自覚症状のような)が続いていると診断した。 2.リハビリが必要であると判断した時期及びその理由 初回の診察時より、頚椎症性脊髄症による、腱反射の著しい亢進・深部反射の陽性は明らかであり、筋力の低下も認められることから、関節の拘縮予防、筋力の維持・増強訓練、歩行能力の維持等の、最低限のリハビリテーションが必要であることは当然と考え、6月21日に診断書を書いている。また、武蔵野赤十字病院の作業療法を8月20日に指示している。 3.転倒前後で、徳見の症状に変化があったといえるか。 診察した範囲では、すでに3月以上経っていること、転倒前の症状が不明のために、症状の変化があったかは分からない。 4.徳見は転換ヒステリーの患者であるといえるか。そうだとしたら、どのように対処すべきか。 「転換ヒステリー」かどうかは、専門が異なるので判断できない。ただし、初診時より8月までは、上に述べてきたように、「鞭打ち損傷」様の不眠等に対して、前医でも投与されていたような向精神薬や睡眠導入剤を使用した。 5.一般的に、頚椎症性脊髄症の手術後の患者に対しては、生活上どのような注意を指示するか。 頚椎症性脊髄症の手術後の患者さんに対しては(手術方法や程度・手術後の期間により異なっているが)、一般的には、頚部への繰り返される動作の制限と、転倒等による突発的な頚部への過負担の予防を、患者および家族に指示することが多い。 6.徳見の場合、左足を長下肢装具で固定された状態で後ろに倒れたが、このような場合、必ず骨折もしくは頭蓋内出血が起きるものと考えられるか。 転倒時の所見・症状が、どの程度であったかが不明のため、回答するのが困難であるが、頚椎症性脊髄症の手術後で、左下肢を長下肢装具で固定された状態で後方に倒れると(転倒時の歩行速度・転倒原因、転倒方向、床の状況によって異なると思われるが)、必ず「頭蓋骨骨折」「頭蓋内出血」がおきるとは断定できないと考える。反射的に頚部を前屈して頭部への外傷を阻止しようとすることが一般的と考える。そのことによって、頭部への外傷は避けられるが、頚部の過屈曲により、上記の「鞭打ち損傷」様症状が引き起こされた可能性が高くなったと考える。 |