6月25日(火)市議会傍聴
 朝6時に起きて、徳見とスケット、そして昨夜来訪したナッちゃんの3人で、横浜市役所へ。「障労裁判」のビラまきである。ナッちゃんは、この春高校を卒業して、某ホテルに就職、はりきって仕事をしているが、なかなか大変らしく、やっととれた休みを、徳見と過ごすために来訪。ビラまきを手伝ってくれることになった。
 9時ごろ終えて、市役所内にある市議会へ。ここでは、市議会議員の井上さくら・与那原寛子両人の「懲罰」問題の採決をめぐる本会議がある(6月6日の「日誌」参照)。
 まず、議会の入り口で、10数人の「市民」が、登場してくる議員に対して、「市民に選ばれた議員をクビにしないでください」と呼びかける。そのたびに、施設管理課の職員と守衛さん(だと思う)が、「他の市民の方に迷惑になるから……と、それを制止する。しかし、それ以上のことは何もしない。職員も「仕事」として、やっているのだ。
 徳見は、10時から、「障労裁判」の弁護団会議なので、途中で退場して、森田弁護士の事務所へ。スケットは、徳見を送ってから、ナッちゃんと共に、市議会への傍聴に戻る。
 10時過ぎに、議会に到着すると、すでに本会議は始まっている。以前、川崎市議会を傍聴したことがあるが、それとほとんど同じで、傍聴席は、「天井桟敷」といった風情である。見下ろすと、90人の出席議員のほとんどの頭が見える。壇上には、「懲罰委員会」の報告を、議員の誰やらがしている。「井上さくらは、議会の秩序を乱した」というのである。
 井上さんの「弁明」のあと、神奈川ネット・共産党の反対意見、自民・民主・公明などの賛成意見がおこなわれる。ポイント・ポイントで傍聴席から拍手やヤジが飛び、そのたびに、職員が制止する。議長が、何度か、「地方自治法○条により、退席を……」と叫ぶ。自民党議員が、傍聴席を見上げて、「おまえら、何を言うのか!」などと、やじり返す……が、実際に退場させられる者はいない。議場騒然とした雰囲気の中で、まず、井上さくらさんの懲罰が採択された。
 時間は11時20分ごろ。続いて、与那原寛子さんの懲罰動議が審議されはじめる。しかし、12時には弁護団会議か終わるために、中座して、弁護士事務所へ向かう。 
 共同通信の記事は、次のように伝えている。

 「日の丸」反対で議員除名 政令市で初、横浜市議会
 横浜市議会は25日の本会議で、議場での「日の丸」掲揚に反対し、議長席を占拠した井上さくら氏(37)=所属会派・市民の党=と与那原寛子氏(37)=同=の市議2人を除名処分とし、議員資格をはく奪した。除名は地方議員に対する最も重い懲罰で、政令市の議員が受けたのは初めて。2人は「地方自治法に基づく神奈川県知事への審決申請、処分取り消しを求める訴訟など、あらゆる法的手段を取る」としている。採決は記名投票で行われ、自民、民主、公明などが除名に賛成、共産などは反対した。採決結果は、井上氏が投票総数90人のうち賛成69人、反対21人。井上氏除名後に行われた与那原氏は、投票総数89人のうち賛成69人、反対20人だった。

 ナッちゃんは、傍聴席のヤジや議員の応酬などをみて、「どっちもどっち、子どものケンカみたい……!」と感想の述べる。「民主主義」の名の下に、多数派が少数派を圧伏させる手段として、「多数決」がある。それを正当化するために、「議会の権威」や秩序が必要とされる。それは、裁判所においても同じである。裁判官が黒い「制服」を身にまとい、高い位置から一同を見渡し、傍聴者のヤジや私語も許さないのと同じだ。「権力」の象徴としての「日の丸」に反対したこと、そのものが排除の対象とされたのである。
 圧倒的な権威・権力に対して、「ささやかに」抵抗する手段が、ヤジや拍手でしかないのだが、それすらも(それだから?)許さない「議会性民主主義」の秩序とは……? 
 障害者になったことで解雇された徳見が、その不当性を当局に抗議したときにも、「弁明の機会」を与えられた。しかし、「すでに(解雇という)結論ありき」という状況の中で、「弁明」は、「意見をきいて、十分に検討しました」というだけにしか利用されなかった。それが「民主主義」であり、それを受け入れなければ排除される……。今回も、全く同じ構図だ。
 いずれ、ナッちゃんにも、そのことが分かるときがくるかもしれない。

 後日「市議会情報通」から聞くところによると、今回の二人の「追放劇」の発端は、高秀前市長が落選したため、中田新市長に対する自民党の「嫌がらせ」なのだという。
 これまで、本会議場に「日の丸」を掲げていなかったのに、(おそらく、中田は日の丸反対派だと、自民党が勘違いしたのだろうか)、今回突然日の丸掲揚をした(当の中田は、日の丸については無関心? むしろ掲揚派だと思うけれど……。その証拠に、市長室に前から掲げられていた日の丸は、中田になってもそのままである)。結局、それにかみついたのが、市民の党の「若い」女性議員の二人だった。
 ところで、多数派を占める自民党議員(議員100人中33人、しかも、すべて「オジさん」なのだ)は、以前から女性議員イジメをしていたのだが、とくに、この与那原、井上の若い女性議員は、権威・権力をものともせずに、ことごとく既成の価値観に抵抗(挑戦)していたため、今回の「事件」は、格好の標的になったらしい。
 今回、「6時間も議長席を占拠した」と自民党が主張するのだが、その実態は、日の丸を批判して、議長席につめよった二人に対して、議長が逃げてしまい、議長席で議長が出てくるのを待っていたのだという。情報通によれば、「以前から無能の噂のあった議長だから、どうしていいか分からず逃げてしまった」のだというが、結果的には、それが自民党にうまく利用されてしまったわけである。
 それにしても、こんなことで、議員「除名」にまで発展するとは、横浜市のいい恥さらしで(もっとも、そのことについては、こちらにとってはどうでもいいことなのだが)、全国から、抗議やあきれたという電話が殺到したという。
 徳見の解雇問題にしても、似たようなものかもしれない……?!



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